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印度學佛教學研究第53巻 第2号 平 成17年3月 (129)

初期 有部 論書 におけ る無 表 と律儀

青 原 令 知

説 一 切 有 部 に 特 有 の 概 念 で あ る 無 表(avijnapti)業 は,律 儀(saiilvara)・ 不 律 儀

(asamvara)・ 非 律 儀 非 不 律 儀(naivasamvar・nasamvarah)の 三 種 に 分 類 さ れ,さ らに

律 儀 は 別 解 脱 律 儀(pratimOksa-samvara)・ 静 慮 律 儀(dhyana-samvara)・ 無 漏 律 儀(anas-

rava-sameara)の 三 種 に 区 分 さ れ る1).

無 表 業 に つ い て は こ れ ま で,そ の 実 有 論 議 や 業 の 潜 勢 力 と し て の あ り方,あ る

い は無 表 色 の概 念 無 表 の 語 の 意 味 な ど,さ ま ざ ま な 角 度 か ら論 じ ら れ て き た が,

こ の 律 儀 等 の 無 表 業 の 分 類 に つ い て は,触 れ ら れ る こ とが 少 な か っ た よ う に 思 わ

れ る2).し か し,無 表 の 語 や 概 念 が 経 典 な ど で は 見 ら れ な い の に 対 して,律 儀 と

い う言 葉 は 古 くか ら 経 典 や 律 蔵 で も使 用 さ れ て き た も の で あ る.無 表業が律儀 を

中 心 に 分 類 さ れ る の で あ る な ら,有 部 ア ビ ダ ル マ に お い て,無 表 業 の 概 念 成 立 に,

律 儀 と い う こ と が 深 く関 わ っ て い る こ とが 当 然 予 想 さ れ る で あ ろ う.ま た,律 儀

(samvara)は,ジ ャ イ ナ 教 の 実 践 の 概 念 と し て 重 要 な 用 語 で も あ り,そ の関連 か

ら も 示 唆 的 で あ る.

律 儀 とい う翻 訳 語 そ の も の も 不 可 解 で あ る が,原 語samvaraは,「 抑 制 」 あ るい

は 「防 護 」 を 意 味 し,真 諦 は 「
護 」 と訳 す.経 典 や 律 蔵 で は,別 解 脱 律 儀,す な

わ ち 個 別 に 煩 悩 を 断 じ て 解 脱 へ 向 か う素 地 を 作 る た め の 戒(欲 界 繋 の戒)を 表 わ

す こ とが 多 い.戒 律 を 守 っ て 悪 業 が 抑 制 さ れ,防 護 さ れ た 状 態 は,そ うで な い 者

と の 区 別 が 表 面 的 に 見 え る も の で は な い.そ こ に 律 儀 が 無 表(avijnapti)す なわち


表 示 さ れ な い 」 業 と し て 思 考 さ れ る 要 素 を 持 ち あ わ せ て い る.一 方 で ア ビ ダル

マ 論 師 た ち の 関 心 事 は,入 門 的 な 戒 律 よ り も,実 際 に 煩 悩 を 断 じ修 め て い く聖 道

論 で あ る.禅 定 を 修 め,無 漏 道 を 発 揮 し て,煩 悩 を 断 つ 際 に,道 そ の も の の もつ

悪 業 へ の 抑 制 力 に 着 目 し た と し て も 不 思 議 で は な い.そ れ ら を 静 慮 律 儀(欲 界繋

の 戒),無 漏 律 儀(無 漏 の 戒)と 呼 び,別 解 脱 律 儀 と並 べ 無 表 業 の 分 類 の 中 心 に 据

え た の で あ る.

しか し これ ら の 律 儀 が,ど う し て,ま た い つ 頃 か ら 無 表 業 と し て 位 置 づ け られ

― 876―
(130) 初期有部論書 におけ る無表 と律儀(青 原)

る よ う に な っ た か は,明 ら か で は な い.そ こ で こ の 小 稿 で は,最 初 期 の有 部 論 書

で あ る 『集 異 門 足 論 』 と 『法蘊 足 論 』 に お い て,無 表 業 と律 儀 の 扱 わ れ 方,特 に

上 記 の よ う な 無 表 業 の 分 類 と の 関 連 を 明 ら か に し,無 表 業 の成 立 を 探 る一 助 と し

た い.

す で に 三 友 健容 に よ っ て 明 ら か に さ れ て い る よ う に3),初 期二論書 において は

無 表 業 に つ い て ま と ま っ た 見 解 は 示 さ れ ず,「 無 表 業 」 の 語 の 用 例 は,両 論 とも

僅 か に 一 箇 所 だ け に 見 られ る.『 法蘊 足 論 』 は 四 聖 諦 の 中 の 八 聖 道 の 正 語 ・正 業 ・

正 命 の 解 説 部 分,『 集 異 門 足 論 』 は 十 無 学 法 の 無 学 正 語 ・無 学 正 業 ・無 学 正 命 の

部 分 で あ る.こ の 用 例 を,無 表 業 の 分 類 の 面 か ら再 検 討 し て み よ う.


法蘊 足 論 』(大 正26.481c20-482a3)
云何 正 語.謂 聖 弟 子.於 苦 思 惟 苦.乃 至 於 道 思惟 道.無 漏 作 意 相應 思擇 力 故.除 趣 邪 命

語 四 悪 行.於餘 語 悪 行 所 得 無 漏 遠 離 ・勝遠 離 ・近 遠 離 ・極 遠 離 ・寂 静 ・律 儀 ・無 作 ・無

造 ・棄 捨 ・防護 ・船 筏 ・橋 梁 ・堤 塘 ・牆塹 ・於 所 制 約 不踰 不踰 性 ・不 越 不 越 性 ・無 表 語

業.是 名正 語.

云 何 正 業.謂 聖 弟 子.於 苦 思 惟 苦.乃 至 於 道 思惟 道.無 漏 作 意 相應 思擇 力 故.除 趣 邪 命

身 三悪 行.於餘 身悪 行所 得 無 漏.遠 離 乃 至無 表 身 業.是 名正 業.

云 何 正 命.謂 聖 弟 子.於 苦 思 惟 苦.乃 至 於 道 思 惟 道.無 漏 作 意 相應 思擇 力 故.於 趣 邪 命

身語 悪 行所 得 無 漏.遠 離 乃 至 身語 無 表 業.是 名 正 命.


集 異 門足 論 』(大 正26.452c21)
云 何 無 學 正 語.答 諸 聖 弟 子.於 苦 思 惟 苦.於 集 思 惟 集.於 滅 思 惟 滅.於 道 思 惟 道.無 學

作 意 相應 簡擇 力 故.除 趣 邪 命 語 四 悪 行.於餘 語 悪 行 所 得.無 學 遠 離 ・勝 遠 離 ・近 遠 離 ・

極 遠 離 ・寂 静 ・律 儀 ・無 作 ・無 造 ・棄 捨 ・防護 ・不 行 ・不 犯 ・船 筏 ・橋 梁 ・堤 塘 ・牆塹 ・

於 所 制 約 不踰 不踰 性 ・不 越 不越 性 ・無 表 語 業.是 名無 學 正 語.

(以下,無 學 正 業 ・無 學 正命 も 同様 に つ き省 略)

語 句 の 省 略 な ど,多 少 の 相 違 は あ る が,ほ ぼ 同 文 と言 っ て よ い も の で あ る.

田 中 教 照 に よ れ ぼ4),八 聖 道 支 は,経 典 に お い て 有 漏 と無 漏 の 二 種 類 が あ っ た

が,ア ビ ダ ル マ に お い て 無 漏 の 八 支 が 重 視 さ れ る 傾 向 に な り,特 に 北 伝(す なわ

ち 有 部)で は 四 諦 現 観 の 道 と し て 考 え ら れ た.す な わ ち,有 部 ア ビダルマにお い

て は,八 聖 道 は 四 諦 を 観 ず る無 漏 道 と し て 位 置 づ け ら れ る.

そ の こ と は,上 の引用で も 「
於 苦 思 惟 苦.於 集 思 惟 集.於 滅 思 惟 滅.於 道思惟

道.無 漏 作 意 相應.」 が 八 支 す べ て に 共 通 す る こ と5)に も,表 わ れ て い る.「 無 漏

(無学)作 意 に 相 応 す る 思 択(簡 択)力 」 と は,法 を弁 別 す る無 漏 慧 の はた ら きで

あ る.こ の 四 諦 を 思 惟 観 察 す る 無 漏 の 択 法 に よ っ て 八 支 が 成 り立 っ と解 釈 す る の

―875―
初期有部論書 におけ る無表 と律儀(青 原) (131)

が,有 部 の 八 聖 道 論 の 特 色 で あ る.

そ の 中 で も,正 語 ・正 業 ・正 命 は い わ ば セ ッ ト に な っ て,同 じ解 釈 で 統 一 さ れ

て い る が,正 語 は 邪 命 に 陥 る 語 四 悪 行(妄 語 ・両 舌 ・悪 口 ・綺 語)以 外 の語 悪 行 に

対 し て 得 ら れ る 遠 離 な ど,正 業 は 邪 命 に 陥 る 身 三 悪 行(殺 生 ・偸盗 ・邪 淫)以 外 の

身 悪 行 に 対 し て 得 ら れ る遠 離 な ど,正 命 は 邪 命 に 陥 る 身 ・語 の 悪 行 に 対 し て 得 ら

れ る遠 離 な ど と さ れ,そ れ ぞ れ に 列 挙 さ れ る遠 離 等 の 類 義 語 と し て 「
律儀 」が挙

げ ら れ,ま た 最 後 に 身 と語 の 「
無 表 業 」 が 添 え ら れ て い る(下 線 部).

こ こで挙 げ られ る 「
律 儀 」 を,無 表 業 の 分 類 下 の 律 儀 に 結 び つ け る と す る な ら,

全 体 が 無 漏 道 を 語 っ て い る こ と を 考 え れ ぼ,明 らか に 無 漏 律 儀 を意 図 して い る と

い え る.律 儀等 の 無 表 業 の 分 類 は も と よ り,三 種 の 律 儀 の 分 類 さ え も,こ れ らの

論 書 で 成 立 して い た 痕 跡 は ま っ た く な い が,少 な く と も,後 に無 漏 律 儀 を含 む 三

種 の 律 儀 が 立 て ら れ,そ れ が 無 表 業 の 分 類 に 組 み 入 れ ら れ る 要 素 が,す で に この

記 述 の 中 に は 表 わ れ て い る の で あ る.

無 漏 律 儀 は,静 慮 律 儀 と と も に 随 心 転(cittanuparivartin)と い わ れ,表 所起 す な

わ ち 表 業 か ら 生 ず る 別 解 脱 律 儀 と区 別 さ れ る.具 体 的 に は 無 漏 道 中 の 身 ・語 業 に

関 わ る も の で,『 婆 沙 論 』(大 正27.726b29-c3)に,


八 道 支 者.謂 正 見 ・正 思 惟 ・正 語 ・正 業 ・正 命 ・正 精 進 ・正 念 ・正 定.正 見 即 慧.正 思

惟 即 尋.正 語 ・業 ・命.即 随 心轉.三 根 所發.身 語 無 表.餘 三 如 名 即 心 所 性.

と説 か れ る よ う に,八 聖 道 中 の 正 語 ・正 業 ・正 命 と し て 位 置 づ け ら れ る も の で あ

る.ま さ に 初 期 論 書 の 無 表 業 の 用 例 は,無 漏 律 儀 を 示 して い る の で あ る.さ らに

は,こ れ が 初 期 論 書 中 の 唯 一 の 無 表 業 の 用 例 で あ る こ と は,少 な く と も これ ら二

書 に お い て は,無 表 業 は む しろ 無 漏 律 儀 的 な と こ ろか ら発 想 され た もの と も言 え

る6).

と こ ろ で,こ の 二 論 書 と 同 様 の 文 は,い くっ か の 南 北 の ア ビ ダ ル マ 論 書 に も 見

ら れ る が,微 妙 に 異 な っ て い る.そ の う ち 『品 類 足 論 』 と パ ー リ のVibhunouの 例

を 先 の 二 論 書 と比 較 し て み る.正 語 の 部 分 だ け 引 い て み よ う.


品 類 足 論 』(大 正26.722al7)

正 語 云 何.謂 聖 弟 子等.於 苦 思 惟 苦.於 集 思 惟 集.於 滅 思 惟 滅.於 道 思 惟 道.除 趣 邪 命

語 四悪 行.於餘 語悪 行.由 決擇力 所 引.無 漏 遠 離 ・止 息 ・各 別 遠 離 ・寂 静 ・律 儀 ・不 作 ・

不 造 ・不 行 ・不 犯 ・不毀 分 限 ・堤 塘 ・橋 梁 ・船 筏 ・棄 捨 軌 則 ・不 違 ・不 越 ・不 違 越 住.

是 名 正 語7)
Vibhanga.p.106

―874―
(132) 初期 有部論書 にお ける無表 と律儀(青 原)

tattha katama samrnavaca? yd catuhi vaciduccaritehi arati virati pativirati veramani akiriya akara-
nam anajjhapatti vela-anatikkamo setughato sammavacamaggamgam maggapariyapannam : ayam
vuccati sammavaca.8

そ れ ぞ れ に 列 挙 され る類 義 語 は,遠 離(arati)な ど 「
離 れ る こ と」,不 作(akiri-

ya)な どの 「行 な わ な い こ と」,堤 塘(setughata)な ど 「防護 す る もの 」 を意 味 し,


い ず れ も悪 行 を抑 制 す る こ とを表 現 した も ので あ る.実 は この 一 連 の表 現 の源 泉
は 漢 訳 の経 典 に も あ る.た とえ ば 「
遠 離 ・除 断 ・不 行 ・不 作 ・不 合 ・不 會 」(『中
阿含経』大 正.1.469a29),「不 樂 著 固 守.執 持 不 犯.不 越 時 節.不 度 限 防 」(『雑 阿含
経』大 正2.203c1)と あ り9),論 書 の方 が類 義 語 の 数 を増 して お り,有 部 の初 期 二 論
書 が もっ と も数 多 くな っ て い る.
注 書 した い の は,有 部 論 書 に の み 「
律 儀 」 の 語 が 存 在 し,さ らに そ の 中 で も初
期 論 書 にの み 「
無 表 業 」 が加 わ って い る こ とで あ る.有 部 の み な らず パ ー リ論 書
に も共 通 す る解 釈 が み られ る とい う こ と 自体 か ら して,お そ ら くこの 文 脈 で 八 聖

道 を 定 義 す る仕 方 が 分 派 以 前 に 原 形 と して あ っ た もの と思 わ れ る が,そ こに 有 部
の伝 承 の 中 で 「律 儀 」 の 語 が 付 加 され,さ ら に初 期 論 書 二つ に は,「 無 表 業 」 の

語 が 最 終 的 に 後 か ら挿 入 さ れ た,と い う可 能 性 が 考 え られ る10).そ う考 えね ば,
そこにあ る 「
無 表 業 」 とい う語 は,い か に も付 け加 え た よ うで 不 自然 な感 を 否 め
な い.『 品 類 足 論 』 に そ れ が な い の は,お そ ら く八 聖 道 を考 察 す る テ キ ス トと し
て は,も っ ぱ ら初 期 論 書 が 用 い られ て い た た め,見 過 ご され た ので あ ろ う.逆 に

『品類 足 論 』 で 削 除 され た 可 能 性 も な い訳 で は な い が,『 婆 沙 論 』 に も認 め られ る
正 統 説 に な る も の を削 除 す る理 由 は考 え に くい.
つ ま り,正 語 ・正 業 ・正 命 の解 釈 に お け る,身 語 の悪 行 か ら の遠 離 ・不 作.防

護 とい う既 成 の解 釈 に 「
律 儀 」 とい う概 念 が 導 入 され,そ れ が 最 終 的 に 「
無表業」
と して位 置 づ け られ た とい う こ とで あ る.そ して,こ こで の 律 儀 は,上 述 の よ う
に無 漏 律 儀 と して の 意 味 を有 して い た と考 え られ る.
こ こで 律 儀 は す で に 身 ・語 の二 業 に限 定 され て い る.「 律 儀 」 の語 は,初 期 の

段 階 で ま だ無 表 業 とい う概 念 が な か っ た とき,身 ・語 二 業 の 抑 制 とい う こ とを ア
ビ ダル マ 的 に統 一 す べ く導 入 さ れ た 言 葉 で あ ろ う.し か し,不 律 儀 ・非 律 儀 非 不

律 儀 な どに考 察 が及 ぶ と,ど う して も律 儀 で な い も の を律 儀 の 語 で 収 束 す る こ と
はで きず,「 無 表 業 」 な る新 た な統 一 概 念 を作 り出 した もの と推 測 さ れ る.

こ の推 測 を確 認 す る に は,さ らに「 律 儀 」 の 用 例 を洗 い 出 す 必 要 が あ る こ とは
言 う まで も ない11).

― 873―
初期有部 論書 にお ける無表 と律儀(青 原) (133)

1)AKBh.205.11ff.,『 順 正 理 論 』 大 正29.548a24ff.,『 顕 宗 論 』 大 正29.865b13ff.な ど.


2)無 表 業 を戒 体 と断 じた 佐 藤 密 雄[1971]「 比 丘 性 と戒 体(無 表 色)」(『智 山 学 報 』19)
の研 究 は特 筆 さ れ る,
3)三 友 健容[1976]「 ア ビ ダ ル マ 仏 教 に お け る無 表 業 論 の展 開(一)」(『 大 崎 学 報 』129)

p.120ff.
4)田 中教 照[1980]八 正 道 の 展 開 と修 行 道 論(『 佛 教 學 』9・10)P.136,田 中 教 照[1993]

初 期 仏 教 の修 行 道 論 』(山 喜 房 佛 書 林)p.122ff.
5)た だ し 『集 異 門 足 論 』 の無 学 正 見 は 「
蓋 智 無 生 智.壷 所 不攝 無 學 慧 是 名 無 學 正 見.」
とあ り異 な る.
6)佐 藤[1971](p.166ff.)は,初 期 の 戒 体 は む しろ 道 生 律 儀(無 漏 律 儀)で あ り,別 解
脱 律 儀 が 後 に立 て られ た とす る.
7)cf.『 衆 事 分 阿 毘 曇 論 』(大 正26.653a26)云 何 正 語.謂 賢 聖 弟 子.於 苦 思 惟 苦.乃 至 於
道 思 惟 道.無 漏 意 思 惟 相 鷹.除 邪 命 口 四 過.餘 口悪 行.無 漏 數 滅 ・不 作 ・不 爲 ・收攝
律 儀 ・等 護 ・自防 ・不 作 悪 行 ・不 作 過 罪 ・堅 固 堤 塘 住 ・堅 固 不 犯 住.是 名 正 語 …
8) cf. Drannmasairgami p.63ff.katamatasmimsamayesammavacahoti?ydtasmimsamayecatuhi
vaciduccaritehidrati virati pativirativeramani akiriyaakaranamanajjhapattivela-anatikkamo
setughato sammavacamaggaiigammaggapariyapannam- ayam tasmim samayesammavaca
hoti....
9)い ず れ も他 書 と同 じ く八 聖 道 の 解 釈 中 に見 られ るが,『 中 阿 含 経 』 は正 語.正 業のみ
類 似 し,正 命 は別 な解 釈 の仕 方 を して い る.『 雑 阿含 経 』 の 方 は 三 支 とも有 部 論 書 と同
様 で あ り,お そ ら く有 部 の 伝 承 に 沿 った も の で あ ろ う.パ ー リ経 典 に は 同 じ解 釈 の 文
は み られ な い.い ず れ に して も,こ れ ら三 支 は他 の 八 聖 道 支 と は異 な る扱 い を さ れ る
よ うで あ る.機 会 を 改 め て再 考 して み た い.
10)筆 者 は,六 足 論 は成 立 時期 に は 前後 の 相 違 は あ っ た と して も,教 科 別 の参 考 書 的 に
相 互 補 完 さ れ つ つ,有 部 思 想 の深 化 と とも に,あ る時 代 ま で は 改 訂 さ れ続 け た と考 え
る.そ の 事 情 は,著 者 が 特 定 さ れ権 威 の あ っ た 『発 智 論 』 と は異 な る で あ ろ う.現 存
す る玄奘 訳 は,す べ て 玄奘 時代 の 有 部 が 「
同 じ時代 」 に用 い て い た 現役 の 参 考書 で あ っ
た こ とを 考 慮 せ ね ば な ら な い.少 な く とも 初 期 の 『法蘊 足 論 』 と 『集 異 門足 論 』 は,
古 くか らVibhangaやDhammasanganiと の類 似 が 指摘 され て い る よ うに,そ の原 形 の論
書 が 分 派 以 前 か ら存 在 し,有 部 的 に 改 訂 さ れ た もの で あ る こ とだ け は 間 違 い な い.そ
の 改 訂 は,か な り後 代 まで 続 い た の で は な か ろ うか.
11)口 述 発 表 時 に 示 した初 期 論 書 に お け る他 の律 儀 の 用 例 に つ い て は,紙 数 の 関 係 上,
す べ て別 稿 に譲 る.

〈キ ー ワー ド〉 無 表 業,律 儀 八 聖 道,法蘊 足論 集 異 門足 論,avijnapti,samvara


(龍谷 大 学 文 学 部 非 常 勤 講 師)

―872―

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